2021.11.02
オフショアでラボ型開発する際の注意点と選び方について
オフショア開発の中でもラボ型開発は長期間のシステム開発になるため、委託会社の選び方が重要です。また契約後に後悔しないためにも委託する案件が、そもそもラボ型開発に向いているかどうかを、事前に判断することがポイントです。
さらに円滑に開発を進めるためにも、ラボ型開発における会社選びの注意点についても押さえておくことが重要です。そこで本記事ではラボ型開発に向いている開発の特徴を踏まえて、開発に適している国やラボ型開発の契約、成功のポイントを詳しくご紹介します。
- ラボ型開発は長期的な契約で専用チームを構築する開発方式
- ベトナムはラボ型開発で注目されている国の1つ
- ラボ契約の際には「技術レベル」「言語能力」「離職率」をチェックしよう
- 自社の開発に適しているか、長期的かつ継続的な開発であるか、開発会社のスキルセットと相性を確認することが重要
ラボ型開発に向いている開発とは
ラボ型開発はコストを抑えられる点が、最大のメリットです。そのメリットを享受するには、自社の開発がラボ型開発に向いているかどうかを確認することが第1ステップです。
そもそもオフショア開発はシステムやソフトウェアなどを開発する委託開発の一つ。その中でもラボ型開発は、一定期間専用チームを構築する形式の開発です。契約期間中は専用チームを確保できるため、長期的な開発や安定的に案件が発生する場合に最適です。
またラボ型開発は、アジャイル・モデルに当たる開発方式を採用するケースが多いです。アジャイル・モデルとは、システムを小単位で区切り、実装とテストを繰り返して開発を進めるため、柔軟な仕様変更に対応可能な点が特徴です。
そのためユーザーの声や動きに合わせて柔軟な仕様変更が求められるWebサービスや、テストを繰り返した上で仕様を決定する開発には、ラボ型開発が向いています。反対に、タスクや仕様が明確に決まっていおり、手順に沿って開発する案件にラボ型開発は不向きです。
ラボ型開発(オフショア)に適している国とは
ラボ型のオフショア開発において、近年注目されている委託先がベトナムです。請負型で注目されているイメージの大きいベトナムですが、近年はラボ型開発でも人気を集めています。
その最大の理由に、ベトナムには優秀なエンジニアが多いことが挙げられます。技術力の高さでいえば中国やインドにも定評がありますが、ベトナムはコストメリットの高さが魅力。さらに日本企業とのコミュニケーションに慣れている傾向があり、人気を集めています。
また中国やインドのようなIT先進国の人材は近年人件費が高騰しつつあり、日本語でのコミュニケーションが難しいケースも多くみられます。
その中でベトナムは、コストが抑えられるだけでなく技術力があり、さらにはコミュニケーションも取りやすいため、高クオリティかつ円滑な開発に期待できるのです。
ラボ契約をする際に見るべきポイント
ラボ型開発は長期的な契約となるため、契約後に後悔しないためにも契約する際に注意が必要です。主にラボ型開発の注意点としては、開発会社の得意領域、日本語検定試験の取得状況、離職率を確認することが重要です。ここでは、チェックすべき3つのポイントについて詳しく解説します。
①技術レベル
ひとくちに開発といっても、案件によって必要な技術レベルや内容はさまざまです。優秀な人材が揃っていることに変わりがなくとも、具体的な技術レベルを確認しないままで、委託してしまうと開発分野への学習コストがかかる場合があります。
ほとんどの開発では、案件に関する学習が必須となってきます。高い技術を持った人材でも、どのように利用されるのかを正しく理解していなければ、開発に取り掛かることが難しいからです。ラボ型開発は稼働人月での契約ですので、この学習期間中でもコストが発生することになります。
そのため単に技術の有無だけではなく、自社の開発分野に強い企業がどうかを確認しましょう。また技術レベルの確認は学習コストのリスクを抑えるだけでなく、自社にノウハウが蓄積できるか否かのポイントにもなります。
②言語能力
多くの開発企業では「日本語対応が可能」と記載されていますが、実際の日本語レベルにはかなりバラつきがあるのが実情です。日本語対応が可能であることを前提に、現場レベルでの言語能力を確認しないまま契約してしまわないように注意しましょう。実際に開発を進める際に、思うようなコミュニケーションが取れない事態に陥る可能性もあります。
また円滑な開発には、発注側と委託側のコミュニケーションが重要です。そのため発注前に実際に担当者と日本語で会話してみることをオススメします。また日本語検定の取得状況を確認することもポイントの1つです。
契約の際には、以下の日本語検定試験の認定目安を参考にしてみてください。ビジネスレベルは以下のN1とN2に値するため、N1とN2の取得状況をチェックしましょう。
N1 | 幅広い場面で使われる日本語を理解することができる |
N2 | 日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる |
N3 | 日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる |
N4 | 基本的な日本語を理解することができる |
N5 | 基本的な日本語をある程度理解することができる |
③離職率
技術力や言語能力に注力しすぎて、見逃がされがちなポイントに離職率があります。アジア圏は日本以上に離職率が高いため、人員交代が起こりやすい点が特徴です。
基本的には契約時にアサインされたメンバーが、契約満了まで専用チームの一員として働くことが一般的です。しかしオフショア開発においては、人員交代が起こりうる可能性を押さえておくべきといえます。実際に人員交代があると、これまでの業務過程や関係構築がゼロベースからのスタートになるリスクもあります。そのため交代数や交代頻度が多い分だけ時間が必要になるため、あらかじめ委託を検討している開発企業の離職率も確認することが重要です。
ラボ型開発を成功させるポイント
ラボ型開発は委託する案件規模も大きく、長期的な契約となることが多いため、失敗のリスクが懸念されます。契約後に失敗なく円滑に開発が進められるようにも、以下のラボ型開発を成功させるための3つのポイントを押さえてみてください。
①ラボ型開発が自社の開発に適しているかを確認する
そもそも委託する案件や開発したい内容が、ラボ型開発に適しているか否かを判断することが重要です。ラボ型開発は仕様変更などの対応が柔軟であり、かつコストを抑えながら長期的に専用チームを抱えられる点がメリットです。
そうしたラボ型開発のメリットを活かすには、自社の開発がラボ型開発に適している必要があります。下記で、改めてラボ型開発に適している・適していない開発の特徴をみていきます。
段階的に仕様変更やテストが必要なケースや、複雑な設計が必要になり、要件定義から相談しながら進めたい場合はラボ型開発が適しています。まずは具体的な開発内容を明確にし、その特徴を踏まえて上記の表を参考に。ラボ型開発の採用可否を決定しましょう。
②長期的かつ継続的に発注できる開発であるかを確認する
ラボ型開発は、基本的に半年〜1年以上の長期的な契約となります。契約期間中は専用チームのリソースを自由に使えるため、開発に必要な人材が安定的に確保できます。
反対に契約期間内に案件がない、継続的に依頼できる開発がないとチームの維持費のみかかっている状態です。その場合はコストを抑えて持続的かつ安定的に人員を確保できるラボ型開発のメリットが享受できず、かえって無駄なコストが発生してしまいます。
そのため開発内容の特性に加えて、長期的または継続的にタスクが発生する案件であり、定量的なタスクが確保できるものであるかを踏まえてラボ型開発を採用することが重要です。
③開発会社のスキルセットと相性を確認する
ノウハウの蓄積、そして円滑で高クオリティな開発のためにはエンジニアの技術力はもちろん、開発会社が得意とする分野であるかも重要なポイントです。
そもそも開発分野にミスマッチがあっては、スピード感をもった高品質な開発は難しくなってしまいます。加えて、自社開発についていけるスキルを持ち合わせているかといった個々のスキルセットを十分に確認することも重要です。
そして難しいポイントでもありますが、信頼関係を構築できるか、自社との相性が良いかも事前にコミュニケーションを取って確認できると安心です。
まとめ 技術レベル・言語能力・離職率をチェックしラボ型開発を進めよう
本記事ではラボ型開発に向いている開発の特徴を踏まえて、開発に適している国やラボ型開発の契約、成功のポイントをご紹介しました。ラボ型開発は長期的な契約で専用チームを構築する開発方式で、コスト面で大きなメリットがあります。
実際にラボ型開発を採用する際には、ベトナムが開発先として魅力的ですが、自社のニーズを明確にしミスマッチを防ぐことが重要です。また技術レベルや言語能力、離職率をチェックし、後悔のないラボ型開発を進めてみてください。
FLINTERSでは、東京の他にベトナムにもオフショア開発拠点を有しており、データ取得などバックエンドの開発を数多く経験してきました。また、コミュニケーションチームの80%超がN2以上を取得しており、コミュニケーションにおける心配も必要ありません。
ラボ型オフショア開発についてご依頼、ご質問などございましたら、ぜひ一度FLINTERSにご相談ください。
執筆者
中川路 寛
KAN NAKAKAWAJI
セールス&マーケチーム所属。 オフショア開発事業のセールスとブログ執筆などのマーケ施策を担当。