2021.10.04

オフショア開発のメリット・デメリットを徹底解説

企業におけるITの活用が進む中、エンジニアをはじめとするIT人材の需要も日々、高まっています。その一方で、国内ではIT人材の不足が課題となっています。

特に専門的な技術を要するエンジニアは、多くの企業で人手不足が深刻化しています。そこで多くの企業は海外に開発を委託する、オフショア開発を採用しています。

本記事ではオフショア開発の概要から、オフショア開発の体制や契約形態についてご紹介します。またオフショア開発を検討している企業が海外へ委託する際、委託先となる国ごとの特徴やメリット・デメリットも合わせてご紹介します。

この記事のポイント!
  • オフショア開発とは、海外(主に中国や東南アジア諸国)へ開発をアウトソーシングすること
  • オフショア開発する企業はIT関連やソフトウェア、システム開発を行う大企業をはじめスタートアップまでさまざま
  • 高いコストパフォーマンスを発揮する一方、コミュニケーションコストや物理的距離といった課題もある

オフショア開発ってどんな開発?

オフショア開発とは、人件費や事業コストの安い海外に開発を委託すること。委託先は、主に東南アジア諸国や中国が挙げられます。

日本では全体的な労働人口が減少しているなか、特にITエンジニア人材の不足が著しい状況です。現に2021年時点で約20万人、そして2030年には約79万人ものIT人材が不足するといわれています。つまり今後さらにIT需要が高まるにも関わらず、反比例する形でIT人材が不足しているのです。さらに国内で優秀なエンジニアを確保するとなると、人材不足も相まって採用コストも高騰します。そのためエンジニア人材を確保でき、コスト削減できるオフショア開発が注目され、多くの企業で活用が進んでいます。

オフショア開発の体制・契約形態について

オフショア開発は、国内で一般的に行われているアウトソーシングと、基本的には開発体制や契約形態は同様です。違いは、委託先が海外ということです。

ただし一括りに契約形態といっても、その種類はスタンダードな「請負開発(請負契約)」をはじめ「ラボ型開発(準委任契約)」や「SES(準委任契約)」などが挙げられます。そのため開発体制や契約形態の種類は、国内での開発と同様に多様化しています。

一般的に請負開発(請負契約)は、単発かつ成果物のみの納品となる場合に採用されることの多い形態です。そのため発注側は要件定義だけを共有し、納品までの工程にはほぼ関与しない点が特徴です。

ラボ型開発は、一定量の仕事を保証した上で、半年〜1年ほどの一定期間で案件を定期的に発注する形態です。案件の内容やかかる工数、定量的な発注が多さなど、企業の業務や案件状況に応じて、採用するオフショア開発の体制や契約形態もさまざまです。

そのため単にオフショア開発といっても、どのような目的で、どのような体制・契約形態で開発を進めるのかを明確化しておく必要があります。特にオフショア開発は海外にアウトソーシングする都合上、言葉の壁によって齟齬があり、トラブルになりやすいので注意が必要です。

オフショア開発ってどういう企業が採用するの?

オフショア開発を採用している企業は、大企業から中小企業、ベンチャー企業などさまざまです。また昨今は業種問わずITの需要が高まっていることから、オフショア開発する企業の業種もさまざま。そのためオフショア開発を採用するのは、どこの企業にも当てはまるといえます。

ただしオフショア開発するケースが多い企業は、もちろん存在します。ここでは、業種・企業規模・開発内容を軸に、どのような企業がオフショア開発を採用しているのか、みていきます。

オフショア開発する業種

オフショア開発を採用することが多い業種は、IT関連をはじめソフトウェアやシステム開発などが当てはまります。開発需要が高まっているなか、社内に抱えているリソースだけではまかなえない企業も多いのが実情です。

他にも、一見すると関係ないように思われる可能性もある、製造業や金融などにおけるオフショア開発の採用が増加傾向にあります。

オフショア開発する企業の規模

オフショア開発は、企業規模が比較的小さな企業が採用すると思われがちです。しかし実際には、大企業から中小企業、そしてスタートアップまで、企業規模に関係なく多くの企業がオフショア開発を採用しています。

大企業は案件数が多いことやシステム・サービスにおけるユーザーが多いなどの要因から、オフショア開発に頼るケースが多くなっています。一方、スタートアップ企業では比較的、小規模なシステム・サービスを作るために、オフショア開発を活用するケースもみられます。またその場合、スピーディに開発とリリースを繰り返しトライアンドエラーで進め、軌道に乗ったシステム・サービスがあれば、それに注力するケースもあります。

オフショア開発の開発内容

以前はWebシステムやHP制作、モバイルアプリといった開発内容が主流でした。また国内エンジニア確保よりもコストがかからない理由からオフショア開発を進めるケースが多い傾向にありました。

しかしオフショア開発する中国や東南アジア諸国といった、国々の技術力向上は著しく、現在は難易度の高い大規模開発や基幹系システムのオフショア開発も実現しています。実際に人工知能(AI)や仮想現実(VR)など、先端テクノロジーの開発を委託している企業も増えつつあり、国内エンジニア以上の技術力を期待できるようになっています。

オフショア開発ってどこの国でやってる?

オフショア開発している国は、中国や東南アジア諸国が中心です。人件費が安く技術力があるという観点では、中国をはじめベトナムやインドが代表的な委託国です。

とはいえ国によって特徴や強みが異なるため、各国の特徴や強みからアウトソーシング先を選ぶことも重要です。ここでは代表的なオフショア開発国である、中国・ベトナム・インド、3カ国の特徴をご紹介します。

中国

世界最大数の人口を誇る中国では、その人口の多さからITエンジニアも確保しやすい国の一つです。また技術力の高さからも、基幹系システムや情報システムといった大規模かつ中長期間の案件を委託する傾向にある点が特徴です。

さらに日本語に精通している人材も多いため、日本語の能力にも期待できます。しかし昨今、中国は人件費も高騰しつつあります。そのため人件費を最優先に委託先を探す場合には、不向きなケースもあります。

ベトナム

日本がオフショア開発を発注する中でも、ベトナムは高い技術力をもつITエンジニアが多く、委託先としてメジャーな国です。特にベトナムは親日国でもあることから、日本語を学習する人が多い国で、ベトナム側からしても日本は人気の高い傾向にあります。

また現在は中国に比べるとITエンジニアの人件費も安く、真面目で勤勉な性格の方が多いのもベトナムの強みです。

インド

インドも中国と同様にエンジニアの人口が多く、かつ高い技術力を誇る点が特徴です。そのため大規模かつ高度な技術力を求める場合に、インドにアウトソーシングするケースが多くみられます。

さらにインドは英語圏でもあるため、コミュニケーションが取りやすい点も人気の理由の1つです。しかし中国と同じく、急激に経済成長している点から人件費が高騰しつつあります。

オフショア開発のデメリットは?

魅力的な点が多いオフショア開発ですが、採用する上でデメリットも存在します。ここではオフショア開発におけるデメリットについてご紹介します。

物理的距離の問題

海外へのアウトソーシングであるため、発注側と委託先には物理的な距離があります。そのためトラブル発生時や現地で顔合わせが必要になった場合に、時間がかかってしまう点はデメリットです。

しかし近年は、ビデオ通話やウェブミーティングなどのオンラインコミュニケーションサービスも普及しています。そのため物理的距離によるコミュニケーション不足などの課題は解消されつつあります。

文化、習慣、言語の壁

文化や習慣の違い、言語の壁がある点は、海外へアウトソーシングする際の課題です。異文化によるギャップや言語の壁により、コミュニケーションコストが発生してしまう点はデメリットでもあります。しかし中国・ベトナム・インドを中心に、日本語に精通している人材も多いため、大きな問題にはならないケースも多いです。

またコミュニケーションコストを特に懸念している場合は、自社専用の開発チームが常にアサインされるラボ型開発での委託がおすすめです。自社専用のチームとなるため、比較的メンバーの自社への理解も深まりやすく、コミュニケーション上のリスクが回避しやすい傾向にあります。

オフショア開発のメリットって?

デメリットがありつつも、メリットの方が大きいことからオフショア開発を採用する企業が増えています。ここでは、オフショア開発のメリットをご紹介します

高いコストパフォーマンスを実現できる

最大のメリットは人件費を抑えつつも、国内と遜色ない技術力に期待できるコストパフォーマンスの高さです。実際、国内のITエンジニアよりも安く高い技術を期待できるケースも珍しくありません。

たとえば国内で委託すると100万円かかる案件でも、ベトナムであれば30〜40万円に抑えることも可能です。開発コストを最も重視する場合にはオフショア開発を採用しない手はないといっても過言ではありません。

IT人材の不足を補える

IT需要が高まる一方で、IT人材の不足が著しい日本。オフショア開発の担い手として人材を多く抱えている中国や東南アジアに委託することで、リソース確保が可能になります。

IT人材が確保できることで、結果的に受けられる案件数や規模も大きくなり、企業の利益に直結します。

特に今後も日本におけるIT人材不足は深刻化していくと見込まれています。そのため早期にオフショア開発を進め社内にノウハウを蓄積するのも、今後を見越すと適切な企業施策の一つになるでしょう。

専属的な開発チームを確保できる

オフショア開発の中でもラボ型開発では、中長期的な開発チームが確保できます。希望する人材をアサインできるだけでなく、中長期的に関係が築けることで自社への理解を持って業務に取り組んでもらうことが可能です。

信頼関係が構築しやすいだけでなく、納期の短期化が実現しやすいメリットもあります。特に昨今の企業における業務形態は、プロジェクト単位で進めるケースが多くなっています。その点でも専属的な開発チームを確保し開発を進めるのは、今後の働き方において一つのモデルにもなるかもしれません。

まとめ オフショア開発で人件費を押さえリソースを確保しよう

海外へのアウトソーシングであるオフショア開発は、人件費を抑えリソースを確保でき、かつ国内と遜色ない技術力、そして成果物を期待できる点が特徴です。

特に中国や東南アジア諸国のオフショア開発は、定量的な仕事が得られかつスキルも向上できるとして、日本とはwin-winな関係にあります。

コストを抑えつつリソースを確保した場合には、ぜひオフショア開発を採用してみてください。


執筆者

中川路 寛
KAN NAKAKAWAJI

セールス&マーケチーム所属。オフショア開発事業のセールスとブログ執筆などのマーケ施策を担当。

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