2021.11.02

【ラボ型開発とは】請負型との違いやメリットを解説

海外に低コストで開発を委託・発注できるオフショア開発には「ラボ型開発」と「請負型開発」、2つの開発形態があります。前者のラボ型開発は、コストを抑えやすい点が特徴。また一定期間におけるシステム開発を、社内のメンバーに海外のメンバーを加えたチームで行う開発方法。

またラボ型開発をはじめ開発の際は、コストはもちろん人材の契約期間、仕様の変更可否など、目的・ニーズに合わせて開発方法を選ぶことがポイントです。本記事ではラボ型開発にフォーカスをあて、そのメリットや請負型との違いを詳しく解説します。

この記事のポイント!
  • オフショア開発には「ラボ型開発」と「請負型開発」の2つの形態がある
  • ラボ型開発は一定期間の契約となり、専用チームをアサインして開発を協働する
  • ラボ型開発の最大のメリットはコストが抑えられること
  • デメリットや請負型開発との違いを押さえた上でラボ型を採用することが重要

ラボ型開発とは

まず主にシステムやソフトウェアにおける開発業務を、コストが抑えられる海外に開発を委託・発注することをオフショア開発といいます。特に日本では開発業務における人件費が高い傾向にあります。そこでラボ型開発によって開発を海外に移し委託・発注し、コストを抑えようとする動きが活発化しています。

オフショア開発には、主に請負型と今回ご紹介するラボ型の2つの発注形態があります。ラボ型開発は、特定の業務・行為に対して報酬が発生する準委任契約で、基本的には3ヶ月〜1年ほどの一定期間で契約を結びます。またラボ型開発は、人材ベースでシステム開発を発注する点が特徴で、案件ベースではない契約方法です。

さらにお客様の専用チームをアサインし、仕様変更などの過程も含めて開発を協働する点も、ラボ型開発の特徴です。そしてシステムやソフトウェアなどの成果物の納品だけを目的とするのではなく、準委任型開発とも呼ばれ開発の修正も含めて行います。

ラボ型開発のメリット

コストの安さ・人材の確保・ノウハウの蓄積・仕様変更の柔軟性といった、主に4つの面がラボ型開発のメリットです。

請負型開発とラボ型開発のどちらを採用して開発するか迷っている場合や、ラボ型開発を進める上でメリットを確認したい場合には、4つのメリットを参考にしてみてください。

①コストを抑えられやすい

ラボ型開発における最大のメリットは、コストを抑えて開発できることです。委託先となるのは、ベトナムやミャンマーなどの東南アジア諸国が一般的です。

これら東南アジア諸国の場合、日本で開発のチームを雇う費用の50〜30%程度のコストに抑えられると言われています。それだけでも大幅なコスト削減につながりますが、加えてラボ型開発であれば途中の仕様変更や修正など幅広く対応可能です。

実際に仕様変更や修正の場合は、追加費用がかかるケースが一般的です。しかしラボ型開発の場合は、追加費用が発生しないケースが多いため、その点でもコストを抑えやすい傾向にあります。

②優秀な人材を中長期間確保できる

優秀な人材を中長期間確保することが可能なのも、ラボ型開発のメリットです。実際に東南アジア諸国のエンジニアは、国内のエンジニアと遜色ない技術を持ち合わせています。さらに日本国内のエンジニアと同等の予算でも、昨今は東南アジア諸国のエンジニアの方がハイスキルなケースも珍しくありません。

また中長期間、人材を確保できることで、委託側が発注側の業務や風土にも慣れ、安定した開発が可能です。さらに優秀な人材ほど育成コストもかからず、高クオリティかつスピーディーな開発が実現します。よって上記のコスト面に加え、人材や成果物の面でもラボ型開発は優れているといえます。

③自社に開発ノウハウを蓄積できる

一定期間協働することから、必然的に開発ノウハウが自社に蓄積できる点もメリットの1つです。日本のエンジニアに劣らない技術を持つ優秀なエンジニアと協働して開発を行うため、自社にないノウハウも蓄積しやすい環境になります。

ノウハウ蓄積も目的とする場合は、その分野に特化した企業に委託するのも1つの方法です。また持続的に案件を協働するため、品質やスピードの改善もしやすく、今後のオフショア開発におけるノウハウも蓄積できます。

実際に昨今は短期的なコスト面を目的にするだけではなく、将来的な開発ノウハウ蓄積を目的にするために、ラボ型開発を取り入れるケースが増えています

④仕様変更など柔軟性のある対応が可能

ラボ型開発は途中の仕様変更ができるなど、柔軟な対応が可能である点も大きなメリットです。請負型開発はラボ型開発とは異なり、要件定義や人件費、設計費などを決定した上で発注するため、基本的に途中で仕様やリソースを変更できません。

しかし一定の期間契約をするラボ型開発であれば、企画や施策が確定していない、仕様変更が発生しやすい開発でも安心して進められます

さらに追加費用などの細かい調整が発生せず、契約期間内であれば自由にリソースを使うことが可能です。よってラボ型開発は、開発しながら施策や仕様を決定していきたい場合に、最適な方法といえます。

ラボ型開発のデメリットと対策

上記のようにメリットが多いラボ型開発ですが、デメリットもあります。そのため契約後に失敗しないためにも、以下のデメリットと対策を押さえた上での採用がポイントです。

①開発チームの構築に時間がかかる

長期的に開発に携わるラボ型開発では、開発チームの人選が重要です。単にスキル的に優秀な人材を集めるだけでは、チームとして成果を出せません。

そのため開発内容や自社の文化などさまざまな要素を考慮して、その分野に特化し相性の良い人材を慎重に選んでチームを構築する必要があります。

またチーム構築から実際に開発に入るまでは一般的に半月〜3ヶ月ほどの時間を要します。開発チームとのミスマッチは開発のクオリティにも大きく関わります。よって個々人のスキルだけではなく、チームとしての機能を念頭におきましょう。その上でスケジュールに余裕を持って、ラボ型開発における人材の採用を決定するのがポイントです。

②開発チームの維持にコストがかかる

ラボ型開発は一定期間の契約であるため、安定してチームを確保できる点が魅力です。その反面、案件がない期間や開発が予定より早く完了した場合でも、契約期間内はコストが発生します。

そのため委託する案件がないにも関わらず、チームを維持するコストが発生してしまうと、コストが抑えられるはずのラボ型開発のメリットが活かせなくなります。そのため案件状況を長い目で確認する必要があります。少なくとも3ヶ月以上の開発が必要になる案件が適していると言えるでしょう。また単発や短期の案件の場合には、かえってラボ型開発だと割高になってしまうケースもあるため要注意です。予想外にリソースが余ってしまった場合には柔軟に案件を調整し、リスクを回避しましょう。

③開発を円滑に進めるための体制作りが必要

ラボ型開発によって開発を円滑に進めるには、チーム構築だけでなく体制作りも欠かせません。開発を丸投げする請負型とは異なり、チームとして協働するためコミュニケーションが重要です。

昨今の東南アジア諸国は、日本語に堪能な海外エンジニアも多い一方で、なかには日本語でのコミュニケーションが難しいケースもあります。そのため開発技術だけでなく言語能力も含めた人選、コミュニケーションに齟齬のない環境の構築がポイントです。

さらにアサインされたメンバーのスキルや性格に応じた業務の割振り、自社メンバーも含めたチームビルディングなど、発注側のマネジメントも重要です。開発技術だけを重視しては。チームでの円滑な開発は実現しないため、パーソナルな部分も踏まえてマネジメントできる体制作りがポイントです。

請負型開発の違い

ラボ型開発は、仕様変更や修正が可能な一定期間の契約でチームを確保できる契約形態です。その一方、請負型開発は仕様や納期が明確であり、成果物の納品を確実に遂行することを目的とした契約形態です。

つまり、システムの要件や仕様をチームで検討しながら長期的に開発を進めたい場合には、ラボ型開発が適しています。反対に仕様が明確で納期通りに成果物が必要な場合には、請負型契約が適しているといえます。

下記表でラボ型開発と請負型開発の違いをチェックして、最適な契約形態を検討してみてください。

  ラボ型開発 請負型開発
選ばれるケース
  • 仕様や要件を変更する可能性がある
  • 案件量が安定している
  • 中長期の開発案件
  • 優秀な人材を長期間確保したい
  • オフショア開発のノウハウや経験を蓄積しながら効率的に開発したい
  • 仕様を含む要件や納期が明確
  • 単発で開発を委託したい
契約形態

準委任契約

請負契約
責任の範囲 業務の遂行 業務の完成
契約期間 3ヶ月〜1年間 納期までの短期間
開発体制 お客様と合意して決定 開発者が決定
メリット
  • コストを抑えられる
  • 優秀な人材を中長期間確保できる
  • 開発ノウハウが蓄積できる
  • 仕様変更などの柔軟な対応が可能
  • 成果物の品質が安定しやすい
  • 納品後に契約不履行があれば修正を依頼できる
  • コストが把握しやすい
デメリット
  • チーム構築に時間がかかる
  • チームの維持コストがかかる
  • 体制作りが必要
  • 仕様変更は追加費用がかかるケースがある
  • 発注時に要件定義の提示が必要
  • 発注側と開発者は連携しにくい
  • 開発ノウハウが蓄積されにくい

まとめ 請負型開発の違いを抑えてラボ型開発を活用しよう

本記事では、ラボ型開発のメリットやデメリット、その対策、そして請負型との違いをご紹介してきました。ラボ型開発は、特にコストを抑え人材を中長期間確保できるといった点が魅力の開発方法です。
また仕様や要件を変更する可能性がある場合や、案件量が安定している中長期の開発の案件では、ラボ型開発がおすすめです。一方で要件や納期が明確な場合や単発で開発を委託したい場合には、請負型開発が適しています。それぞれの違いを抑えて、自社に適切な開発を進めてみてください。

日本ではシステム開発といえば、「請負型開発」という文化が浸透していますが、リリースした後の保守運用を「ラボ型開発」で行うことで予算を抑える、といったことも可能です。
FLINTERSでは、ベトナムにラボ型のオフショア開発拠点を有しており、システム開発における全フェーズを柔軟な契約期間と安価な料金体系で対応させていただきます。

ラボ型オフショア開発についてご依頼、ご質問などございましたら、ぜひ一度FLINTERSにご相談ください。


執筆者

中川路 寛
KAN NAKAKAWAJI

セールス&マーケチーム所属。 オフショア開発事業のセールスとブログ執筆などのマーケ施策を担当。

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